
アスリートキャリアレポート第二部
前回に引き続き「アスリートデュアルキャリアイベント」の第二部の様子をレポートにてお送りします。第一部は、トップアスリートの経験を持つ小坂悠馬さん、山川和樹さん、そして現役アスリートである宮尾綾香選手の3名による、アスリートのデュアルキャリアの可能性について対談していただきました。第二部は、第一部でもお話しいただいた宮尾綾香選手が現在取り組まれているアスリートIT化プロジェクトについて、タイムカプセル株式会社代表相澤謙一郎さんとの対談です。
約一か月前からプログラミングを学び始めたという宮尾選手。なぜプログラミングなのか、なぜ学びを続けるのか、その目的とアスリート×ITという二つの両立についてお伺いいたしました。

宮尾「前までパソコンは、ほぼ電源を入れていない状態でした(笑)。」

相澤さん(以下:相澤)「ご視聴いただいている皆さん、ありがとうございます。第二部を進行させていただきます相澤と申します。よろしくお願いいたします。第二部では、宮尾選手が現在デュアルキャリアに向け、約一か月前から実践されている事について、途中経過としていろいろお話をお伺いしていこうかと思います。よろしくお願いします。」

宮尾さん(以下:宮尾)「よろしくお願いします。」

相澤「では、宮尾選手にプロジェクトがスタートした時のことを思い出していただきたいのですが、宮尾さんのパソコンのスキルはどのような段階からスタートしたのか教えていただけますか?」

宮尾「自分のパソコンは元々持っていましたが、ほぼ電源は入れていない状態でした(笑)」

相澤「メールとかSNSなども全部スマホでやられていたのですか?」

宮尾「そうですね。最初、メールとかやるにはパソコンが便利だよということで買ったのですが、携帯でできるじゃんと分かってからはパソコンを開かなくなりました。」

相澤「そうですよね。今はもうスマホでメールのやり取りだとか、SNSとか、画像を送ったりとかも全部できちゃいますから、パソコンを使わなくなりますよね。実際、プロジェクトを始める前はパソコンをどれくらいの頻度で触っていましたか?」

宮尾「本当、3月4月とかはパソコンを触ってもいない状態で、触るとしたら、ちょっと仕事で使うような感じでした。」

相澤「そのような状態からプログラミングを始めたということなんですね。」

宮尾「そうなんです。」

相澤「まったくプログラミングの知識もなく、かつパソコン自体もあまり使っていないという状態から、プログラミングを始めるというのはハードルが高いことだと思うんですね。通常プログラミングを始める方って、仕事でofficeアプリケーションは使うとか、日常的にパソコンは使う中で、プラスアルファのスキルとしてプログラミングを始めるというのが一般的なんですよ。しかし、宮尾さんは本当にゼロからスタートされて、それこそ沢山困ったことがあったと思います。特にどんなことに困りましたか?」

宮尾「まず、キーボード上で「@」が探せないとかですね。「shift」と何かを押せば何が出てくるとか、キーボード自体の使い方がわからなかったです。」

相澤「そうですよね。目で見える1や2は分かりますが、「これを押しながらこれを押す」などの動きが出てくると一気に難しくなりますよね。」

宮尾「隠れコマンドみたいな(笑)」

相澤「そうです(笑)まず、キーボードの使い方が困ったということですが、他には何か困ったことはありますか?」

宮尾「あとは、ZOOMで授業をやるとなった時に、まずZOOMの立ち上げ方が分からなかったりしました。」

相澤「なるほど。ZOOMをまず立ち上げるためには、インストールやダウンロードをしなければならないですからね。そして今、ZOOMというキーワードが出たので、宮尾さんがやられているプログラミングの学習がどのように進んでいるかということを説明させていただきます。基本的には週に一回、一時間ほどZOOMでプログラミングをレクチャーさせていただくというスタイルなんですけども、それこそZOOMであったりchromeやスラックだったりをゼロからインストールしてただくというところから始まりました。一方で今、コロナウイルスの影響でZOOMでの会議やZOOM飲みなんて言うのも流行りましたが、ZOOMを使うのはだいぶ慣れてきましたか?」

宮尾「そうですね。講座を受ける際に先生から送られてくるURLをクリックすれば開くということを教えていただいて分かりました。」

相澤「ZOOMはクリックすれば開けるので楽ですね。そのように、ZOOMだけでなく講座を受ける際のツールの使い方も経験されていったということですね。ちなみに、そのような困ったとこに対してどうやって解決していったのでしょうか?」

宮尾「例えば、講座に入れないときなどは電話で入れませんと連絡していました(笑)あとは、@が分からないやカッコが分からないなどというのは、それこそZOOMやスラックなどで教えてもらいました。」

相澤「カッコにもたくさん種類がありますからね(笑)」

宮尾「そうなんですよ。カッコの名前なども初めて知りました。口で言うことなんてないですから。」

相澤「全部のカッコを同じにしちゃったらプログラム組めないですもんね(笑)」

宮尾「そうですね(笑)」

相澤「そして、今重要な言葉があったかと思うんですけど、「ちょっとここが分からないな」という時に電話という手段で聞ける人ってあまりいないんですよね。分からないものに当たるとそのまま止まってしまって、スラックとかメールで「ここが分からない」と質問を送ってくれるんですが、そもそも分からないものを文章で頑張って表現してくれているので、受け取る私たちも何を聞かれているのかが分からなくなってしまうことがあるんです。その分、電話やスカイプなど対面の会話で3分で解決するようなことも、30分や1時間かかってしまう人も結構いるんですよ。なので、宮尾さんのように疑問解決に向けてすぐ電話で聞いてくださるという行動はとても大事なことだなと思います。」

宮尾「そうなんですね。ありがとうございます。」

宮尾「(アスリートと仕事の両立に)熱量は沢山必要かもしれないですが、その分人生は豊かになっているかなと思います。」

相澤「では、次の質問なのですが、日々交流するアスリートの方々でIT系でお仕事されている方などいらっしゃいましたか?」

宮尾「一人いて、その方には歓迎されました。」

相澤「その方はどのようなお仕事をされている方ですか?」

宮尾「WEBデザイナーだったと思います。」

相澤「その方はどのような競技をしていたんですか?」

宮尾「キックボクサーです。」

相澤「へー!なるほど。でも、周りには1人くらいだったんですね?」

宮尾「はい。あとはパソコンのことを誰に聞いていいかわからないくらいなので……。」

相澤「うんうん。周りの方々でIT系の仕事をしている方は率としては少ないんですね。周りにIT系の仕事をしている人が何人かいれば、その流れが伝染して自分もできるかなと少し思うかもしれないですが、1人くらいしかいないとなると、自分はできるのかな?と不安に思うことはなかったですか?」

宮尾「そうですね。不安なことでいうと、パソコンのちょっとしたこととかを聞きたいなという時に、近くに人に聞けたらいいんですが、聞いても分からないだろうなという人が多いですね。」

相澤「なるほど。そんな不安などもある中で挑戦し続けるモチベーションや、新たなスキルを身に着けることが必要だと思った背景などはどういったところから来ましたか?」

宮尾「やっぱり、自分がまったくやってこなかった分野なので、収入がある程度もらえるところまでやれたらいいなっていうのと、パソコンがまったくやれないという状態だと不安がありましたね。」

相澤「実際、パソコンを数か月に1回触るかどうかの状態から、現在講座を始めてどれくらいできるようになってきましたか?」

宮尾「教えてもらったことを、今まではメモを見ながらやっていたんですが、今は見なくてもできるようになりました。」

相澤「そうですね。実際に今ワードプレスを使ってWEBサイトの制作をやっているのですが、現在何%くらい製作は進んでいますか?」

宮尾「今はもうあと少しで完成というところです。」

相澤「デザインとかも工夫されたりとかしましたか?」

宮尾「そうですね。かっこよくしたいので背景黒にしてくださいと言ったら、文字も黒かったので何も見えなくなっちゃって(笑)それもCSSで調整したりしながら作りました。」

相澤「それは見えなくなっちゃいますね(笑)そういった、CSSでの装飾なども挑戦されたりしているんですね。」

宮尾「そうですね!」

相澤「分かりました。ありがとうございます。本当にそこまで行けば、あとは少しづつ積み重ねていっていただくと、どんどん将来につながっていくと思います。もちろん、できる時間も限られているかとは思いますが、やれる時間で継続していくことで必ず力になっていくと思いますので、ぜひつなげていってください。」

宮尾「ありがとうございます。」

相澤「あと、9月27日に世界選手権が控えているということで、今回はベトナムでの試合とお伺いしておりますが、現地へはいつ頃はいられるのですか?」

宮尾「そうなんです。現地にはぎりぎりに着きたいので、24日に出発という感じです。」

相澤「そうなんですか!本当に3日前とかなんですね。」

宮尾「本当にぎりぎりに行って、試合して、帰るという形ですね。やっぱり、食事だったり環境だったり、いつもとは違う場所に行くので、あまり長くいて体調を崩してしまうのを避けたいという思いです。」

相澤「なるほど。宮尾選手は今回世界を舞台に戦うわけですが、私たち一般人からすると世界レベルで戦うという状況が想像できないとてもすごいところにあるんですよね(笑)例えば、私たちのような一般人の生活というのは朝起きて仕事に行くという生活が当たり前で、たとえて言うならば仕事というものに100%の熱量を注いでいるわけですが、宮尾選手の場合は選手生活において日本大会があり世界大会がありと私たちの100%の熱量では到底届かないような環境で生きていると思うんです。しかし、そこにさらに「仕事」というものが加わってしまうと、二つのものを同時にやらなければならない訳です。その二つのバランスというものはどのように取られているんですか?」

宮尾「そうですね。あまりそういう風に考えたことはないですね。あくまで好きなことをやっていて、そのうえで仕事をしていて、どちらも生きるうえで必要なので、熱量は沢山必要かもしれないですが、その分人生は豊かになっているかなと思います。」

相澤「その人生が豊かだなと感じる瞬間はどういったタイミングですか?」

宮尾「試合に勝って、みんなにおめでとうとお祝いされるときですね。」

相澤「僕も宮尾選手の写真をたくさん見ておりますが、あの境地って一般の方だとたどり着けない境地じゃないですか。だからこそ、達成した時の感動もありますよね。」

宮尾「はい。それがあるからやめられないというところでもあります(笑)。」

相澤「そんななかで、仕事もして、さらに次のために鍼灸の学校も卒業され、プログラミングも始めたりと、かなりしんどいと思いますがどうですか。」

宮尾「そうですね、でもどれも結局人生を豊かにする手段なのでその3つだったら頑張れるという状態です。」

相澤「すごいですね。先日ちょっとお話をお伺いしたのですが、日々どういったことをやっているのですかという問いで、トレーニングともおっしゃっていましたが、その中にも、プランニングであったり、対戦相手の分析やスポンサーなどへの交渉であったり、選手生活の中にはトレーニングだけでなく沢山の要素があるのだとお伺いしました。やはりそういう生活を継続していく上では気の重いことはあるのでしょうか?」

宮尾「やっぱり、練習だけしていれば試合に出れるというのはちょっと違うと思っています。試合をするためにはお金が必要になってくるという話もそうですし、チケットなども全部手売りなので、試合の情報などを一人一人にお知らせしたりという作業ではやっぱり時間がとられますし、練習とは全く違う考え方を使いますね。いままで、就職とかもしたことがないので、スポンサーさんなどにご連絡する事も、普通の大学生とかよりもうまくできなかったりするのもあるので、そういうところで大変なのはありますね。」

相澤「やはり、トレーニング以外でもそういった様々な人間関係であったり、お金であったり、交渉などがある中で、トレーニングも人の2,3倍しなければならい生活を継続的にやれているアスリートは相当にすごいと思いますね。」

宮尾「ありがとうございます。」

相澤「本当に、同世代の中で世界大会などに出場できるような方々は一人二人なわけでして、そういった方々はトレーニングの裏でも様々なやらなければならないことを誠実にやれている方だと思いますし、そのポテンシャルはすごく高いものだと思います。そういった努力が、世の中にもっと評価されるような世の中にしていきたいと思いますし、そのカギとなるように、このプログラムもそうですし、評価されるきっかけをつくりアスリートの方々を支えていけるようなことをしていきたいと思いますね。」

宮尾「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

相澤「これから、世界大会が待っているわけですが、これからの展望や思い描いていることなどを最後にお話しいただけますか?」

宮尾「将来的にまだどれくらいやっていけるかということもわかりませんが、引退した後もボクシングにかかわっていきたいとも思います。鍼灸などでも健康でいたい、きれいになりたい人のお手伝いをしていきたいなと思っているので、ずっと勉強していきたいとおも思いますし、プログラミングの技術も駆使しつつ、勉強しながらそう言ったものを提供していける人間になりたいですね。」

相澤「これから、生涯継続的に新しいことに挑戦していきご自身をアップデートしていくということを継続していくということですね?」

宮尾「そうです。」

相澤「世界チャンピオンエンジニアなんて言うのは世界初かもしれないですね(笑)」

宮尾「どうでしょうか(笑)もしそうならなりたいですね(笑)」

相澤「ぜひ、ウィキペディアに世界初世界チャンピオンエンジニアと記入されていただきたいです!今後も応援しております。では、宮尾綾香選手にお話ししていただきました。本日はありがとうございました!」

宮尾「ありがとうございました!」
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